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祐は変わらない。
俺を一度も責めない。
そればかりか俺の心配をする。
「また来る。今度は何がいい?フルーツがいいか?」
「甘いものがいいな。いちごとかさくらんぼのケーキ」
「了解。体弱いんだからな、無理はするなよ」
「もう。子供じゃないんだから!真さんの方こそ、無理はしないでね。お仕事、危険なことあるだろうから…」
「ああ、無理はしない。約束する」
祐に見送られて玄関を出た。
パタン
ドアが閉まった瞬間に手が震え出した。
抱き締める寸前で我に返った。
ひとつひとつの仕草に冷静ではいられなくなる。
祐の人生を狂わせた。
それなのに、出会ってすぐに惹かれ想いは募ってく。
「…祐の足を奪った俺に」
あの夜、小雨が降りしきる中に広がる血。
倒れたまま動かない少女。
火を噴いた銃を握りしめた自分がいて―――
顔を上げると停めた黒塗りの車の脇には、訳知り顔の若頭が立っていた。
「真、もうここに来るのはやめろ」
衝撃のひとことだった。
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