第一章 出会い

3/5
前へ
/5ページ
次へ
 少し遠回りをして帰ろう、僕は普段行かない山裾の田園風景の広がる方へ車を走らせた。  両側か田んぼの間を走る真っ直ぐな道、こんな田舎に必要かと疑うほど綺麗に整備され、両側には背の高い街路樹が立ち並んでいる。  その街路樹は定期的に日陰を作り、車に影を落とす。  ああ、今走っている風景を車の外からムービーで撮りたいなと思う。  ドライブと言うには短すぎるほどの時間だったが、とりあえず堪能した僕はもう一つの事を思い出した。  車を買ったらやってみたい事、それはドライブスルーって奴だ。  丁度朝も食べてなくて腹が減っていたし、スマホで検索すると割りと近くにハンバーガーショップがあるらしいので、そちらへ車を走らせた。  車を受け取りに行ったのは10時だったが、いつの間にか時間が経って今は昼時だった。  少し混んだ駐車場に入り、ドライブスルーのレーンへと進んでいく。  前には3台ほど待っており、僕の後ろにもすぐ3台ほどの待つ車が並んだのだった。  ハンバーガーショップの大きなガラスに映る自分の車とそれに乗る自分。  ほほう他人から見るとこう見えているのか、なかなか良い。  いや物凄くかっこいいんじゃなかろうか?  「プッ」  遠慮気味に鳴らされたクラクションで、前の車が進んでいることに気がついた。  後ろの車にペコペコしつつゆっくり前に進む。    「お待たせしました、ご注文をお伺いいたします」  スピーカーから告げられる若い女性の声に、全くメニューを思案していなかったことに気がついた。  僕は慌てて、適当にバーガーのセットと単品でバーガーとシェイクを注文した。    「…に…のセット、…ですね、承りました。前にお進みしてお待ち下さい」  店を回り込みながらレーンを前に進んでいく。    僕は思い違いをしていた、セットにはドリンクが付いているのだから改めてシェイクを頼む必要はなかった。  紙袋とドリンクが刺さっている紙の箱を受け取る時、初めて気がついた。  まぁいい、取り合えすば発進して…  ガックン  こんな時に限ってクラッチミートを失敗してエンストをしてしまった。  大きく揺れる車体、止まるエンジン、そして床に落ちるシェイクとコーラ…  「マジかよ…」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加