天の川は北の空を結ぶか

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天の川は北の空を結ぶか

「今年も来たねー、七夕祭!星がきれー!」 桃色の浴衣に身を包んだ彼女が無邪気に言うのを見て、俺はつい口角が上がってしまう。田舎から単身ここへ進学してできた初めての彼女だけに、その喜びも一入だ。 「おう、そうだな。田舎じゃ七夕はもう一月遅いから、早い分何だか得した気分だよ」 「あー、君って北海道から来たんだっけ。…あっ、言い事考えた」 すると、彼女は夜空で満開に咲く星の大河を背負いながら、満面の笑みで言い放つ。その姿は星明りに照らされて、どこか神秘的な雰囲気を醸す。 「じゃあ8月になったら、北海道の君の実家に行きたいな。そしたら七夕二回楽しめるし浴衣着れるし、一石二鳥だよね?」 「…か、考えておくよ」 俺は頬が熱くなるのを感じながら、消え入るような声ではぐらかすのが精一杯だった。 父さん、母さん、田舎の友達よ。今年の里帰りのお土産は、こんな天然彼女もついてくる事になりそうだ。
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