こんなのありか?

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手際よく刻む包丁の音。たちまち立ち込める食欲を誘ういい匂い。 さっきまで空虚で貧乏くさい俺の部屋が様相を整える。 あいつがいるだけでここまで雰囲気が変わるなんてなんて奴。 俺といえばテキパキと動くしろをただ呆然とみつめていた。 さすがに悪いかなーと思いテーブルを拭こうとすると細部まで作り込まれた芸術作品のように透き通った手に制された。 「先輩はゆっくりと休んでいてください。自分が拭きますから」 「あー、いいの?悪いな何から何まで」 行き場の失ったごつごつと大きさだけある骨ばった手で頭をかく。 「ふふふ、いいんです。先輩の世話をやくの好きなんで」
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