仕事の依頼

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 「ちょっ!?」  「面倒事に巻き込まれるのはゴメンだ。自分の後始末くらい自分でしなよ」  羽織に両手を入れ、紫焔はそう言い放った。  「ア、アンタそれでも男なの!?」  この問いに紫焔は一つ頷いてみせた。 そして背を向けてその場を立ち去ろうとしたその時、今度は逆に襟首を掴まれたのである。  「ぐえっ!?」  どこからそんな力が出たのかと思うくらいの力で引っ張られた。  「何すんだよ!!」  「こっちのセリフよ!! 女性一人も助けられないでそんなモンぶらさげてるんじゃないわよ!?」  「ふざけんな!! 俺は面倒事に巻き込まれんのが一番嫌いなの!!」  二人は追ってきた貴族達其方退けで口喧嘩を開始した。  「お、おい。お前ら・・・・・・」  「うっせぇ!! お前らは黙ってろ!!」  紫焔は男達を指差して怒鳴った。  「は、はい・・・・・・」  貴族達を一喝してから再び、女性を見る。  「大体、お前がこんな連中に何か妙な事を企むから追っかけられるハメになったんじゃないのか!?」  「うるさいわね!! 初対面の人間にお前呼ばわりされる覚えはないわよ!! 大体、引っかかるこいつらもこいつらなのよ!!」  この言葉に、貴族達は我に返った。  ほんの数秒前までは、何故自分達が怒鳴られたのかも分からなかったのだ。  「き、貴様ら!! 我々を舐めてるのか!!」  五人全員が剣を抜き切っ先を二人に向けたのである。  「二人まとめて死ね!!」  言った男の切っ先が女性に届くか届かないかという瞬間、紫焔の刀の柄が男の鳩尾を深々とえぐった。  男は声も立てずに膝から崩れ落ち、白目を向いて倒れた。  「あっ・・・・・・」  無意識の行為に、紫焔は声を漏らしてしまった。  その声はどこか後悔の念さえあった。  紫焔は右手で顔を覆うとそのまま残りの貴族達を見た。  「なぁ、アンタら。この女性がアンタらに何をしたのかは、俺の知ったこっちゃない。どうせやるんなら俺のいない場所で話しをしてもらいたいんだよ」  紫焔は右手をブラリと下げ左手で刀の鞘を握り、鍔に親指をかけた。  「だがな、アンタらは剣を鞘から抜いて、斬りかかって来た。それが何を意味しているか、分かるか?」  声と表情に感情がない。  淡々と発せられる言葉に貴族達は動けなくなった。 
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