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背中に流れる汗の量が尋常でないのを感じた。
今、自分達が相対している男が自分たちよりも数段格上であるのが分かったのだ。
「一度抜いた剣は、どちらかがくたばるまで鞘には収まらねぇぞ? その覚悟はあるんだろうな?」
口の中の水分が完全に無くなった。
貴族達は震える足を何とか動かそうとするが、それすらも出来ずにいた。
まさに蛇に睨まれた蛙状態である。
「失せろ。今回は見逃してやる」
言って紫焔は鍔と鞘をぶつけ、甲高いを立てた。
同時に男達の体は動き、回れ右してその場から退散したのであった。
紫焔は頭を掻きながら自分の足元に倒れている男を見た。
「やれやれ。仲間意識の薄い連中だなぁ。置いてきぼりかよ」
呟いて女性を見る。
「アンナもこれに懲りたら妙な事はしない事だな。それじゃあね」
紫焔は再び両手を羽織に入れ、その場をあとにしたのだった。
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