仕事の依頼

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 数日後、紫焔は賞金稼ぎ達が集まる集会所にいた。  ここに来れば駆け出しの賞金稼ぎ達が出来る依頼から上級者向けの依頼が掲示されている。中には自分に合っているかどうかが分からない者達もいるので、その時は情報屋と呼ばれる者達に相談し、見合った仕事を勧めてくれたりもする。駆け出しの者が上級者向けの仕事を請け負う事も稀にあるが、その場合はかなりの確率で命を落とすか瀕死の状態でここに帰ってくる事が殆どだ。紫焔もそんな現場を何度も目の当たりにしてきた。この日も駆け出しの賞金稼ぎの青年がボロボロの状態で集会所に運ばれてきていた。  「可哀相に。高等ランクの仕事に挑んだらしいぞ」  「アイツ。この世界に足を踏み入れてまだ数ヶ月も経っていなかったらしいぜ」  ベテランの賞金稼ぎ達が口々にする。  日常茶飯事のこの光景に紫焔は何の感動も覚えない。腰に下げていた煙管入れから煙管を取り出しながら掲示されている仕事内容を眺める。これといった目新しい内容はない。紫焔クラスになると、どんな仕事も受けられるのだが、中級以下の仕事を取ってしまうと、他の賞金稼ぎ達に仕事が回らなくなってしまう。それを防ぐために、集団を形成している賞金稼ぎ達がいる。それをギルドと呼び、駆け出しの者達から上級者達までが集まって、仕事を分けて稼ぎを分配しているのだ。  紫焔は窓際の喫煙所へ向かい長椅子に腰を下ろした。  「お疲れさまです、紫焔様」  お盆に湯呑を載せて、一人の女性が声を掛けてきた。  女性は紫焔の前に湯呑を置くと、対面の長椅子に腰を下ろした。  黒髪のショートヘアに眼鏡をしたその女性はこの集会所の係員で、腕利きの賞金稼ぎでもある。名前をメリアと言った。  「どうも、メリアさん」  紫焔は湯呑に手を伸ばしながら、礼を言う。  「ここ最近、紫焔様に出張ってもらうような内容の仕事はありませんね。大概が中級者向けの内容ですし」  「まぁ、それだけ平和だって事でしょう? 良い事ですよ」  「逆を言えば、退屈でしょう?」  薄笑を浮かべながら、メリアが言う。  確かにその通りだと思いつつも、紫焔は何も言わなかった。  そこまで戦闘狂という訳でもないし、出来れば面倒事には巻き込まれたくない。  出来る仕事がこれしかないからやっているだけなのだ。  
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