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「そう言えば、先日紫焔様を尋ねてきた女性が居ましたよ?」
「俺を?」
湯呑を机に置き、煙管の先に火を灯す。
煙を一度大きく吸い込んでから、メリアの顔を見た。
「えぇ。紫色の着流しを着た茶色の髪で、オッドアイの男性と言ったら、該当者は一人ですもの」
確かに、と心の中で呟き紫焔は頷いた。
「で、その女性は何か言ってました?」
「ええ、確か・・・・・・」
とメリアが説明しようとしたその時、後ろから別の女性の声が聞こえてきた。
「やっと見つけたわよ」
聞き覚えのある声に、紫焔はゆっくりと振り返った。
そこには先日、貴族達から助けた女性が立っていた。
この前は夜だったという事もあり、あまり良く覚えていなかったが、その女性は青色の髪をポニーテールでまとめていた。
「この方です。紫焔様を尋ねてきた女性は」
メリアが言って指差す。
「数日ぶり、紫焔さん。あたしはシリル。シリル・ナダミよ」
シリルと名乗った女性はメリアの隣りに座ると、足を組み紫焔の顔を正面から見据えた。メリアは静かに席を立ち、給湯室へと消えていった。
「それで、俺を探していたって聞いたけど?」
「ええ。それと貴方の事を少しだけ調べさせてもらったわ。分かったのは貴方の名前と賞金稼ぎの腕が事実上の最高位であると言った事だけ。あとは色んな情報屋に聞いても、答えは一緒。労力とお金の無駄だったわ」
言って肩をすくめてみせた。
「それは御苦労さまでした。で、本題は?」
「あまり、御苦労さまって感じのしない言葉だけど、まぁいいわ。単刀直入に言うわ。仕事を受けてもらいたいの」
「内容と報酬次第だな」
煙管の先に入っていた刻み煙草を灰皿に落としながらそう言った。
上級者、しかも最高位にいる賞金稼ぎに仕事を依頼しようという場合、それに見合った報酬が必要になる。これが見合わない場合は、内容を聞く前に拒絶される。
「報酬は金貨で500枚。それと手付金として、ここに金貨50枚持参しているわ」
シリルは布製の袋を机に置いて袋を開けてみせた。
確かに中には金貨が入ってる。
「合計で550枚か。悪くないな」
金貨500枚以上の仕事ならば、確かに上級者向けである。
「で、仕事の内容は? お嬢さんの用心棒か何かか?」
「ある物を探してもらいたいの。そしてそれを破壊して」
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