晴に恵まれて

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 出羽さんはその子と入れ違うように店を出て行った。忙しそうにベルがもう一度鳴る。 出羽さんとすれ違った少年は、店の中をいぶかしげに見回しながら、レジにいる私のところまで真っ直ぐ歩いてくる。その仕草でなんとなく察した、この子は買い物に来たわけではないみたいだ。 「あの、小学生くらいの女の子、来ませんでしたか」  ややぶっきら棒に男の子は言った。仕方なく聞いてる、そんな空気を漂わせて。そんな雰囲気がこちらにまで届いて、私はため息の基となりそうなものを胸に溜め込んでしまう。 「ええっと、家族連れの人は沢山来ましたけど……一人だけっていうのは記憶に無いですね」  一日の記憶を回想する、小学生くらいの女の子…… 「んー、もうちょっと特徴とか言っていただければ、なにか分かるかもしれないですね」  私は男の子に問う。それを聞いた少年は眉をひそめ、少し目線を泳がせ考えているようだ。 「例えば服とか、なにか身につけていたとか」  聞こえているのかいないのか、少年は私の方へ見向きもしないで下唇に指を当てた。 沈黙だけが流れていく、今ここで他のお客さんが来ないのは果たして良い事なのか、悪いことなのか。頭の隅でなんとなく考えていると、彼の人差し指が、するりと抵抗なく色の薄い唇から離れた。 「上は普通のTシャツで、色は黄色。下は白のスカートです。青のナップザックを背負っていたと思うんですけど……」  今日の午前中は大勢のお客さんが来て、もちろん観光に来ている子供を連れた人は沢山いたけれど、その特徴がある子はやはり見た覚えは無かった。改めて思い返しながら、やはりそう結論づけると私は彼に、申し訳ないと会釈する。 「うーん、ごめんなさい、やっぱりそういう子はいなかったと思います」  私がそう告げると少年は特に気にした様子も無く、「そうでしたか」と言って回れ右をした。何故そんなことを聞いたのか、その子の情報が本当に欲しかったのかと疑いたくなるような、無感心な態度だった。 「あ、あのっ」  声をかけて彼の足を止める。声が届いてすぐに、木の床が彼の体重を長く支えた。 「……なんですか?」  再びこちらに向き直った少年はかなり不機嫌そうだった。私よりも十歳は幼いだろうに、その眼差しは私を気圧すには充分な威力を持っていた。 「その女の子のことを捜してるん……ですよね?」
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