1人が本棚に入れています
本棚に追加
「いらっしゃいませぇっ! いらっしゃいっ、お昼終盤で弁当値引きしてますよぉっ!」
校舎二階、廊下中央の小ラウンジ。
外観で言えば壁が円形にせり出している部分の内側、二クラス合同の授業などもできるそこの片隅で、
「購買コーナー」の看板を頭上に花はあらん限りの元気声を張り上げていた。
時刻は12時40分。
店じまいまであと10分の後半戦には、
菓子パンやスイーツの類がよく売れる。
「弁当値引き! 弁当値引きしてます!
いかがですかっ…と、はーい、餡ドーナツにラスクで180円でぇす! はいっ、ちょうどお預かり!
ランチ終えちゃった?
これ、お弁当安いですけど…はい、いらないですよねー。お弁当買う人いませんかぁっ?」
「買わねーだろ、この時間じゃ」
中途半端に売れ残ったおむすび弁当の完売目指して躍起に叫ぶ花の左で、しかし誰かがぼそりと呟く。
聞きとがめて、花は営業スマイルを即座に捨ててその方を睨んだ。
人のやる気を削ぐ一言にあまりに腹が立ったから……ではなく、その声の持ち主が客ではないと確信したからだ。
最初のコメントを投稿しよう!