1人が本棚に入れています
本棚に追加
「お父さん! 早くしないと短冊なくなっちゃうよ!」
今年県外の大学へと進学した子どもが夏休みとなり帰ってきた。
最後に姿を見たときは、ほんの3、4ヶ月前なのに随分と綺麗になった。
「………なぁ、ひとつ聞いていいか?」
前を歩く我が子に俺はふぅと一息し、胃の痛みに耐えながら、ずっと我慢していた質問をする。
「………大学では、女装が流行っているのか?」
数ヶ月前まで爽やかな短髪だった息子が、大学から帰ってきたら女装にはまっていた。
「ううん。私だけ。可愛いでしょ?」
にっこりと微笑む我が子に俺の胃の痛みは増す。
これも個性だと尊重すべきなのか、強引にでも辞めさせるべきなのか。俺は親としてどうしたらいいのかわからない。
兎にも角にも、今宵俺が短冊に書く内容は決まった。
『せめて10年以内に、孫の顔が見れますように』
恐らく元旦にも同じ願いをするんだろうなと思いつつ、俺は天の川を見上げる息子の下へ向かった。
最初のコメントを投稿しよう!