せめて10年以内に……

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「お父さん! 早くしないと短冊なくなっちゃうよ!」 今年県外の大学へと進学した子どもが夏休みとなり帰ってきた。 最後に姿を見たときは、ほんの3、4ヶ月前なのに随分と綺麗になった。 「………なぁ、ひとつ聞いていいか?」 前を歩く我が子に俺はふぅと一息し、胃の痛みに耐えながら、ずっと我慢していた質問をする。 「………大学では、女装が流行っているのか?」 数ヶ月前まで爽やかな短髪だった息子が、大学から帰ってきたら女装にはまっていた。 「ううん。私だけ。可愛いでしょ?」 にっこりと微笑む我が子に俺の胃の痛みは増す。 これも個性だと尊重すべきなのか、強引にでも辞めさせるべきなのか。俺は親としてどうしたらいいのかわからない。 兎にも角にも、今宵俺が短冊に書く内容は決まった。 『せめて10年以内に、孫の顔が見れますように』 恐らく元旦にも同じ願いをするんだろうなと思いつつ、俺は天の川を見上げる息子の下へ向かった。
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