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先輩が切ない目で私を見る。
「ちい…」
私の名前を呼ぶその声は少し掠れていた。
何も言わずただ一つ頷くと先輩の唇がまた重なった。
きっと、私だけじゃなく先輩も思ってくれたんだ。
心と心が繋がって、それだけでも嬉しいんだけどそうしたらもっともっとお互いを側に感じたくてーーー
そうですよね?
先輩…
「ごめん…ちい。ご両親が帰ってくるといけない。」
そう言いながら私を優しく抱き起こしてくれる先輩。
「先輩…?」
私、今なら先輩と…
心からそう望んだのに…
「焦ることないよ。大事にしたいんだ。ちいの事。」
乱れた制服のブラウスの襟元を正してくれる。
「私、先輩となら…それにうちの親、今日は本当に遅くなるって、」
「ちい、ありがとう。ちいの気持ち、ちゃんと伝わってる。」
それなら先輩、どうして私の目を見て言ってくれないんですか?
言いようのない、不安に心が押し潰されそうになる。
そして、
その日、先輩はそのまま帰っていった。
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