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「珍しいね、キミがここを訪ねてくるなんて。」
「すいません。」
「今、秘書にコーヒーでも持ってこさせようか?」
「いえっ、直ぐに帰るつもりなので…あの、ほんとスイマセン。会社に来てしまって。」
そう、私は今、優人お兄さんの会社に来ていた。
と言うか会社の近くまで来たけれどあまりにもの立派さに怖じ気づいて、やっぱり帰ろうとしていた所、出先から帰ってきた優人お兄さんに見つかってしまったのだ。
「いや、ちいちゃんが来てくれるなんて嬉しいよ。それで?女子高生一人が勇気振り絞ってこんな所に来るくらいの何か悩みでもあるんだろ?聞くよ。」
さすが優人お兄さん。
大人の余裕で話を聞き出してくれる。
だから、私は正直に話した。
幸せなのに不安で仕方ないこと。
先輩からの愛を感じるのに何故か先輩との距離がどんどん離れてく気がすること。
それは夏休みを前にして先輩の様子が変わったから。
どこかぼんやりしていて、
何か考え込んでいるような…
そして、時折見せるその視線はとても遠くを見ている気がして…
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