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賑わいを見せる七夕会場の波に逆らうように彼女は駆け出した。
ードンッ。カシャん。
「あ。ゴメンなさい。急いでるの」
すれ違いで当たった肩が痛かった。
ふと下を見ると何やら落ちている。
(…鍵の落し物)
さっきの子が落としたんだろう。
慌てていた様子を思い出し、不安がよぎった。自分も進行方向から身を翻し駆け出した。
「…はぁ…はぁ」
追いかける内に、商店街まで戻ってしまった。
でも、さっきまで見えていた彼女が見当たらない。
時間は8時を少し過ぎた所だ。
「…ケチ!たった1分オーバーしただけでしょ!」
斜め向かいの八百屋から声が聞こえた。
「だめだよ。タイムセールなんだから」
弱った八百屋の親父の声も聞こえる。
彼女は見つかったが、
なんだか残念な気持ちになった。
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