2人が本棚に入れています
本棚に追加
【秋山と浅間 2044年再会後の話】
「最近どうだよ、お前の方は」
そう切り出したのは向こうだった。照明が乏しいバーの中、彼の目は怪しく光る。
「俺は……荻野さんの下で働いてます」
俺がそう言うと浅間さんは静かに笑みをこぼし、「知ってるよ」と小さく呟いた。相変わらずの情報量だ。俺はやっぱりこの人にはかなわない。
「お前が思っているほど俺は優秀じゃねえよ」
彼の言葉に、俺はまた読まれてるなと苦笑する。それでも、彼は俺のただ一人の上司だった。高校時代は本当に楽しくて、非日常で。俺が壊したのに、まだそんな風に考えてしまう。
「小早川さんとはどうなんですか」
「離婚したよ、23年位前に」
そうですか。俺、彼女にこっぴどく振られたんですよ。あなたに近づくための踏み台でしかないって。もう二度と近づかないでくれませんかって。俺だって聖夜を殺した犯人が彼女だって気づいてましたよ。それでも、それでも――惚れたんだから仕方ないじゃありませんか。
思い浮かばなくていい事が次々浮かんでくる。どうしてしまったのだろうか。俺は……俺は、まだ彼女が好きなのだろうか。だから浅間さんになろうと躍起になってたのだろうか。
「……俺が超能力者だってわかった瞬間離婚を切り出されたよ」
「え?」
そんなわけない。彼女は荻野さんから話を聞いていたはずだ。超能力者と知った上で浅間さんと結婚したのではないか。そんなはずはない。違う。これではまるで彼に新たな傷を作っただけだ――。
「浅間さん。悪徳部、再結成しませんか」
その表情は驚きに固まっている。まるでそんな事を言われるとは思ってなかったみたいに。
「荻野さんも、俺も、浅間さんもいます。現役メンバーが三人も揃っているんです。あっ、あと聖夜2号もいますし! その他にも癖が強いメンツがごろごろいますから――だから、悪徳部再結成しましょう。現役時代より女っ気はないですけど」
俺がそう言うと、浅間さんは堪えきれないように笑い出す。その笑い方は高校時代の笑い方そっくりで――。
「お前、鏡見てみろよ。すっげえ悪い顔してんぞ」
それを聞いた俺は貴方には言われたくない、とだけ返しておいた。
☆
小早川さんは悪い女だなっていう話。なんかこう、秋山と浅間の対等な会話本当好き。
最初のコメントを投稿しよう!