秋山 稔

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【秋山と荻野の話1】 「俺――荻野さんに協力しますから。あの時反超能力者グループを名乗っていた人物を全員洗い出して――」 「君が浅間先輩から学んだことってそんなことだった?」  霊安室前のベンチで、彼は俺の顔を見ながらそうため息をついた。その言葉が何を意味するかなんてわかっている。彼は復讐を望んでいないことくらい、俺にもわかっているのだ。  しかし、俺は彼女を助けられなかった。あの時目の前にいたのに稲嶺ゆかりを見殺しにした。遥さんが稲嶺ゆかりを好いていることを知っていた。いや、遥さんだけじゃない。浅間氏も、俺だってそうだった。だからこそ、俺は悪徳部の人達には幸せになって欲しいと思ったのだ。  光が消えた赤い瞳が俺を見据える。動けない。まるで魔眼だ。高校時代と変わらない容姿、変わらない言動。まるでそのまま時が止まってしまっているかのようだ。 「いいんだよ、もう」  その言葉が俺の体を突き動かす。いつの間にか彼の胸倉を掴んでいた。 「よくないんだよ!!」  自分でも何でこんなことをしてるのかわからなかった。彼に当たることはしてはいけないと思っていたはずなのに。まるで俺がただ一人癇癪を起こしているみたいじゃないか。 「よく、ないんです。なんで真紀さんが撃たれなくちゃならなかったんですか。こんなの間違ってる! 奴らが正義だと言うなら! 超能力者が悪だと言うなら!! 俺は悪にでもなんでもなりますよっ!」  彼は鬱陶しそうに俺の手を振りほどき「君も死ぬことになるよ」と笑みを浮かべた。やっぱり一人でやるつもりだったんだ。やっぱり、この人は―― 「上等ですよ。俺悪運だけは昔から強いんですから」 ★ 秋山くんは運は悪いけど悪運は強い気がする。
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