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リマ症候群? それは一体――?
「教えてあげたいのですが、そろそろお別れのようですね」
「……ッ…………ッ!」
息が出来ない。酸素が足りない。それでも俺は彼女を愛してしまっている為に両手に力を込めることが出来ない。互いに愛し合っている行為をしながらなので、俺は彼女の身体から離れたくなかった。
「一つだけ教えますね」
「……ッ?」
頭がぼーっとしてきた。彼女は何を教えてくれるんだ?
「貴方の下手な演技……面白かったですよ」
「嘘…だろ…」
――俺は最後にそう呟き意識を失った。
「逝きましたか? じゃあ、最後に知りたかったことを教えてあげますね。リマ症候群とは犯人が人質に好意を持つ事……ですよ」
人質に好意、又は愛情を持ってしまった犯人は手に掛ける事が出来なくなる。勉強不足ですね。ストックホルム症候群をもっと深く調べていたら、リマ症候群にも辿り付けた筈なのに。本当に残念な男。
男の身体をスポンジで満面無く洗い指紋を失くす。そして私は風呂場に水を貯めて、その中に既に息のしていない男の顔を入れた。岸沼勝……ね。浴室から出て身体を拭き、男の予備の服を借りて着替える。自分の携帯を取り出し、ある人に電話した。
「もしもし、姉さん? 姉さんが捨てた男が、また私の元に来たから始末しといたから。え? そいつの名前? 岸沼勝って人だけど。……覚えてないの? 呆れた。あれほど私に愚痴っていた男じゃない」
――馬鹿な男。私の愛しの姉さんに釣り合うわけがないのに。
「所で姉さん? 後処理をしたのだから迎えに来てくれるわよね? それに火照った身体を姉さんに鎮めてほしいの……ね? うん、わかった。住所はメールで送っておくから。それにGPSもあるし大丈夫でしょ。ん、待ってる」
もし生まれ変わったらもう少し勉強したほうがいいよ? 浴室で寝ている哀れな男さん。
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