act.1 A fatal meeting. ーそれは、運命の出会いー

2/8
前へ
/157ページ
次へ
麗らかな春の日差しと、心地の良い風と新緑の薫り。  はじまりの季節に新たな出逢いを求め、男性も女性も美しく格好よく、みな其々が思い思いにお洒落を楽しむ。  街をゆく女性たちは、パレットに載せた絵具のように鮮やかな服装で、男性たちの目を惹きつけている。  ひとり、またひとりと、花から花へと舞い移る蝶のような華やかさのなかにいて、明らかに蝶とは違う羽を有する飛行物体がひとり……  男性だけでなく女性からも、等しく視線を奪うであろう、その強烈なるインパクトの正体は――  (ふふふ。 今日は久々の大収穫だったな♪ あ~ 早く読みたいッ!) ブラック、ネイビー、グレー。  およそ春とはほど遠い、装いを無視した野暮ったいコーディネート。  否、コーディネートなどと横文字で表現するのも憚れる、「寝間着ですか?」とお伺いをたてたくなる絶妙なるセンス。  襟首の伸びたカットソー、ジャケット代わりの学園指定ジャージ(上衣)に、足首の締まったスウェット(下衣)。 己の顔を見られたくないのか、長い前髪で面を隠し、腰まである漆黒の髪をひとつにまとめ、黒縁眼鏡(瓶底)で武装した、非常にインパクトのある少女。
/157ページ

最初のコメントを投稿しよう!

159人が本棚に入れています
本棚に追加