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今回の碧羽のお願いは、もとはと言えば彼女を長らくひとりにし、寂しい思いをさせてしまったことに対する、つぐないプレイなのだ。
それをすべからく、凜は事実を捻じ曲げて己の欲望を碧羽に植え付けてしまった。なんとも怖ろしい男ではあるが、非常に悪知恵の働く腐れ外道でもあった。
『それ、ひどい言われようだよね。僕だって一応は人並みに傷つくんだけど』
などと、勝手に地の文に非難を口にする凜は置いといて、純粋でひとを疑うことを知らない碧羽は、「うん、わかった。それで、わたしはなにをしたらいいの?」と、無垢な瞳を凜に向けて教えを乞うた。
漸はさっそく不満顔となる。乗り遅れてしまったことに対する歯痒さもあるが、碧羽が向ける瞳のさきが凜であることに嫉妬したのだ。非常におもしろくない。
しかし漸は考えた。『俺も碧羽から褒美をもらう権利はあるんじゃないか?』と。 ……いや、ない。断言する。
けれど漸は凜に言い切った。「俺だって身体張るんだ、おまえだけにイイ思いさせてたまるかよ」と。
途端に凜は冷酷で非情なまでのサタン顔になり、漸の耳もとで、ひとには言えない漸の恥ずかしい過去を口にする。「僕の邪魔をすると、碧羽に口を滑らせて言っちゃうよ」と。
ひっそりと殺意を含ませ脅された漸は、盛大に顔を引きつらせて身を引いたそうだ。
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