2人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
「先生は、そんな人じゃありません!」
淡々とした話のやりとりが続いていたのに、
怜美(れみ)は思わず声を張り上げていた。
「先生は、そんなことするような人じゃないんです!」
怜美がいるのは、警察署の取調室だ。
かれこれ、1時間が過ぎた。
名前や仕事など怜美自身に関することから、今回の件についての
話をしていた所だった。
スーツ姿の刑事がパソコンを前にして、
太い指で淡々と調書をつくっている。
ニカッと作り笑いをすると、色の変わった差し歯が気になる。
体格が良く、がっちりしている。スーツがきつそうな感じがするのは、
よっぽど身体に筋肉があるからだろうか。
最初は気分を和ませようとしているのか、優しい声で、あれこれ
おしゃべりをしながらの取り調べだった。
その声が優しければ優しい程、
少しずつ心に重苦しい水銀を流し込まれるような気分になっていく。
最初のコメントを投稿しよう!