◆運命の瞬間

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突然の出来事だった。 鉄の排水口にヒールを取られてしまった。 急いでいる時は、ツイてない時が多い。 ストッキングの下からは血が滲んでいる。 大人になってから転ぶと、どうしてこんなに 大変なんだろう。 その瞬間は恥ずかしさで、痛みも忘れていたが、 本当に痛かったのはその後だった。 ズキッ。 足首がもう動かせない。立てない。 なにより、地べたにへたっている自分の姿が 恥ずかしくてなお動けない。 「大丈夫ですか?」 不意に声をかけられて、反射的に 「大丈夫です!」 と答えたものの、人がいることにも気がつかなかったし この状況を見られた恥ずかしさから逃げたかった。
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