◆運命の瞬間

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「大丈夫じゃないですよね??」 しゃがみ込んで来た人の麦わら帽子と手袋が目に入った。 どうやら、ガーデニングの最中だったらしい。 草の匂いが鼻をついてくる。 ――― 親切なおじさんか。 ――― とちょっと安堵の気持ちがわいてきた。 「急いでいて、足を挫いてしまったみたいです」 「えぇ、分かっています。見てましたよ。」 ――― やっぱり見られていたのね ――― 「救急車でも呼びますか?」 「いや、大したこと無いです。大丈夫です。  ちょっとしばらくしたら、歩けますから」 恥ずかしくて消え入りそうな私の心。 次の瞬間、その人は手袋を外した。 中から出てきたのは、真っ白い透き通るような細い腕。 えっ? おじさんにしては若すぎる。 何よりも、すごくキレイな手だ。 私よりもずっと白く、肌がきめ細かいのが分かる。 そしてその手が、私の足に伸びてきた。
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