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その日は梅雨でもないのに、どしゃ降りの豪雨だった。
「うへぇ。なんで外でたら降ってくんだよ…恨まれる筋合いはねーぞ雨に」
ぶつくさ言いながら研究室に入ると、初っ端から違和感に襲われた。
違和感の正体は、目の前の来客用ソファに座る男。紫のライダースレザー(?)にこれまた紫のレザーパンツ。
端整な顔立ち故か非常に似合っているのが、男としては少々嫉妬してしまう。
「やっくんやっくん」
「……」
「イケメン拾った」
「もとの所に帰してらっしゃい!」
「やだやだ!ちゃんと世話するもん!ちゃんと夜のお世話するもの!」
「黙れや夜のアマゾンズがぁ!」
閑話休題、とりあえず事情聴取だ。
「あんた名前は?」
「…チェイス」
これまたよく通るバリトンボイス。若干作ってる感があるが、似合っているのでまた嫉妬。
「わかりました。千重 伊須(ちえ いす)さんですね」
書類を纏めていたいおりん先輩の天然発言に奴は…
「…それでいい」
ツッコむどころか迎合する始末。
「しれっと順応してんじゃねえぞそこの紫ィ!」
そんなこんなで、チェイスと名乗る男は影宮研究室に居付くことに…
「なってたまるかぁーーー!」
「拒否権は認めないわよ」
「なんでだぁーーー!」
「ただし耶俥、テメーはダメよ」
最早この男との絡みは避けられない状態にあった。
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