第1章

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暑いね――、6月までは結構涼しい日も有ったけど、7月になったら寝苦しい夜が増えて来た。 寝苦しい夜を乗り越える手段の1つとして、怪談話ってのがある。 怪談話をしてあげたいが、私自身その手の物が駄目なのだわ。 それでだ、怪談では無いけど怖い話を聞かせてあげよう。 3.11、東日本大震災、君達の中にも怖い思いをした人はいると思うけど。 あ、違う、違う、3.11が本題じゃないから。 あの震災のせいで私は失業しちゃってね、失業保険を貰えたので、暫く家でテレビを見ながらのんびりしていた。 そうしたら、震災や原発事故で東京の方へ避難している福島県人に向けて、汚染者は来るなとか帰れとかの罵声を浴びせた奴がいると、テレビのニュースキャスターが話している。 これを聞いて、昔学生の頃住んでいた国分寺市の市役所に掲げられていた、看板の文字を思い出した。 看板にはこう書かれていた、「非核宣言都市」とね。 その看板を見てその時思ったのは、人の故郷の福島に原子力発電所を押し付けておいて、自分達は非核宣言だと。 そういう事を言うのなら、原子力発電所で発電した電気も使用するなって、思った事も思い出した。 それで私は、東京の人達にも放射能の恐ろしさを体験して貰おうと、考えた訳さ。 ワゴン車にスコップと土嚢袋、それに放射能測定器を積み込み、事故を起こした原子力発電所に向かった。 警戒している警察官達の目をかいくぐり、砂浜でホットスポットを見つけ、見つけた地点の砂を袋に詰め車に積み込む。 積み込んだ砂を東京やその近隣県の、保育園や小中学校それに公園の砂場にばらまいた。 1ヵ月くらいかけて、10数回往復したかな。
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