真夏のクリオネ

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「それでさぁ、」「えー、お前の」「給食カレーだって」「わたしそんなんじゃないよー」「消ゴム貸して!」      気付いてよ 「でもやっぱり」「おもしれぇ」「なにそれー」「見た見た!」「次の授業は」「バカじゃねえの!」「あのゲームって」      気付いてよ  教室。窓際の前から3番目。寝たふりをしている俺に話しかける人はいなかった。  いや、そうではない。  寝たふりをしなくても喋りかける人はいなかった。  俺はクリオネだった。  極寒の海で、独り、たゆたう。  それならどうすれば良い?  そしたらどうすれば良い?  素直に、みんなの輪の中に入りたかった。  入れてくれ。  入れてくれ。  入れてくれ。  俺の叫び、主張、意見。全ては海底へと沈んでいった。  それならどうすれば良い?  そしたらどうすれば良い?  その問いに返事はない。ただ、真夏の日差しが俺を突き刺すだけだった。
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