犬山君の朝

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犬山は高校時代はぼっちからは程遠い存在であった。交際人数は2人、文化祭では皆から頼られ、文化祭大賞を受賞、学校内で犬山の名前を知らないものはいなかった。 体育祭のリレーだけはビリであったが…。 それが今ではこの有り様である。 この部屋唯一の特徴であるあの張り紙も大学一年時、犬山が独り暮らしであることを良いことに入り浸っていた高校の友人に向けて書いた物だった。 今はもう役目を果たすことはない。 しかし、犬山は剥がすことが出来ないでいる。 トーストを焼き、コーヒーを淹れた犬山は朝食を食べ始めた。 食事を摂る際の犬山の表情は終始暗い。 やはり高校生活を明るく過ごしただけに、今の生活との大きなギャップについていけないのだろう。 大学で講義を受け、帰るだけの生活。 アフリカの難民達に比べたら幸せだ、と犬山は考える。 しかし欠伸のような溜め息が出るばかりであった。 朝食を摂り終えると犬山は着替え始めた。 普段、犬山の服装に気を掛ける人間なんていないので別段、お洒落をする必要もない。 着替えが終わり、ノートや筆箱などが入った鞄を持つと、靴を履き、念のために鏡で自分の姿を見る。 「髪切らなきゃな…。」 と独り言を玄関に残し、犬山は大学へと向かった。
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