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「奴等は科学を手放しに信じてしまう。恐ろしいものよ」
先人は蒼き空を目指して、手を伸ばした。
しかし、近付けば近付くほど、空は濁り、彼らの望んだ蒼は消えた。
「科学を以て求めたそれは、科学の先には無いというのに」
先人たちが羨んだ物も未来へと切り進む現代人は知る由もない。志高き若人は黒い宙(そら)の果てを探す。
「科学とは宗教。知れば聾となり、解せば盲となる」
23世紀。
東アジア最大の都市である東京。密集する灰色ビル群の中に、塔が建った。
それは自らの貴さを教えるために高く、己の無罪を諭すために白い。
「お前は何を思う? “東京バベル”よ」
天はそれに貫かれ、黒い血を流した。
科学の象徴はそれでも自らの犯した罪を知らず、穢れを分からぬ純白のまま。
「神々は黄昏、未知は死んだ」
人々は可能性を拒絶し、自身の身体に枷を付ける。
「相対すべきは科学。今よりお前を否定する」
その日よりバベルの塔は崩れ始めた。
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