きっと、彼と彼女の願いはひとつ。

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1年1度の再会に甘んじている彦星にいい加減辟易していた。 お前は織姫のために小型船舶免許を取ってモータボードで天の川を横断するぐらいの気概はないのか、と。 ・・・・・・そう思うのは、僕の立場を彦星に重ねているからだろうけど。 「ね、私もう書けたよ」 手早く短冊に願いごとを書いた彼女が立ち上がって先に葉竹に掛けた。 慣れない下駄を引きずるように屋台のある方へ行ってしまう。 ことん、ことっ。 偶に帰ってきて、この手の祭りに誘ってくれるのはいつも彼女の方だ。 度胸のない僕は花より男子と言わんばかりのその姿勢に今にも消し飛ばされようとしていた。 する願いごとは決めてきたというのに決心がつかない。 ・・・・・・ふと、彼女の短冊が目につく。 『意気地無しに勇気を。』 ははっ、 苦笑。 遠くから彼女の声が聞こえる。 「もう、早くしてよね!」 ああ。 「すぐ追いつくよ!」
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