気付けば……

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「何をそんなに怖がっているんだ? 俺、なんかしたか?」 アクトは不思議そうに首を傾げている。 女が怖れている理由が本当に分からないのだ。 敵意も殺意も出していないのに、何故怖がっているのだろうか。 そんな気持ちがアクトの心に段々苛立ちを産みはじめる。 「どうしたらい――」 「なんだコイツ。おい! その女を寄越せ! この、オークのブルスデル様がいただいていく!」 「……あ?」 「ブ、ブルスデル」 エルフの女はアクトの後ろから現れた魔物を見て腰を抜かしてしまう。 その衝撃でブルスデルと呼ばれたオーク族の男の名前だけ言葉にできた。 このブルスデルは魔王族がいなくなり、辺りに強い魔物もいなくなったこの土地で弱いゴブリンや意思を持たないスライム、また自分たちの同族をまとめあげ、リーダーとして人間やエルフ、ドワーフ等の種族を蹂躙してきた筆頭の一人だ。 エルフの女はそのことを知っていたがために腰を抜かしたのだ。 アクトとブルスデル、両方の脅威にさらされて、立っていることさえできなくなってしまった。 ブルスデルはオークだ。 豚のような顔に筋肉質ではない大きな体、鉄の鎧を見に纏い長めの槍を装備している。 「な、なんだ、お前……。このブルスデル様を威圧するつもりか!」 アクトからしたら声をかけられたから振り替えって相手の顔を拝んだだけの話だが、ブルスデルにとっては殺意を撒き散らしている化け物にしか写らなかったようだ。
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