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暗く陰鬱な雰囲気の漂う一辺が3メートル程の狭い部屋に男がいた。
蝋燭の火が時々どこからか流れてきたであろう風に揺られて部屋の影が形を変えるが、魔法によってつけられたその火が消えることはない。
壁は土でできているのか、触れば削れそうにざらざらとした質感だ。
男は床に寝そべり、床には何かを食べた後であろうゴミが散乱している。
狭い部屋であるため、ゴミだけで床が埋め尽くされて足の踏み場もない。
男の目線の先には女の裸が写った立体動画が流れている。
空中へ照射された光が集まって立体となっているため触ることは出来ず、若干向こう側が見えるほどには透けている。
その女にはかなりの特徴があった。
まず黒い肌。
黒曜石のように光を反射させるその肌と色を見つめていると吸い込まれてしまう錯覚を覚える。
物語に登場する長い耳はエルフ、それも肌の色から分かるのはダークエルフだろうということだ。
その裸体を艶かしく動かし、まるでその男を誘惑しているように見える。
実際は不特定多数の者を誘惑しているのだろう。
男の肌も黒く、至るところは生まれながらにして筋肉質で屈強な体に頑強な骨格を持っている。
ただ、男はエルフではないため、耳は長くない。
耳の部分には禍々しく捻れた角が後頭部より覆い隠すような大きさで突き出していた。
「はぁ……やっぱエルフのねーちゃんはいいなー」
男の種族は魔王。
生まれながらの絶対王者。
力や悪の象徴であり、他の種族から見てもその強さは比にならない。
そして、男の種族――魔王――はこの世界には沢山いて、魔王の飽和状態が続いている。
かく言うこの男の親も、当然のように魔王なのだ。
その親が上位の魔王で常にトップを争い、多くの人間を蹂躙した、天使の村を滅ぼした等々、様々な魔王話をするほどであった。
通常、自分の力でダンジョンを作成する手段、所謂ダンジョンコアを一から製作してダンジョンマスターとなるが、男は親の七光りによりダンジョンコアを手に入れてからというもの、その部屋から出ることはなかった。
そう、彼は魔王ニートなのだ。
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