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時を同じくして、別のダンジョンの近くに白色のローブに身を包んだ魔法使い然とした女が降り立った。
中空には青い空に次元が避けたようにぽっかりと真っ黒な穴が楕円形に空いている。
彼女のローブには発光効果以外に何かがあるのか、魔の能力を持つものが見ると眉間に皺をよせるほど聖なる力を撒き散らしている。
目深めにローブに付いたフードをかぶるその顔は、慈愛に満ち、色の白さから天使族なのは間違いようがない。
背から伸びる純白な羽を何度か羽ばたかせて地面へ着地した。
体重を感じさせない、見事な翼さばきだろう。
靴にも汚れがなく、通常の神経を持つものなら土の上をその靴で歩くのは嫌がるほどの清潔さだ。
手に持つ、捻れた古そうな杖が、その白一色の体から浮き出て存在感が際立っている。
通常、魔法を補助する物に代表されるのが杖であり、上等な物であれば持ち手――所謂木の材質――等にもこだわり、魔伝導の良いものを選んだりもするが、基本は先端に取り付けられた魔鉱石や宝石の類いで力が決まる。
しかし、女が持つ杖には魔鉱石や宝石が埋まっていない。ただの古びた茶色よりも灰色に近いただの杖だ。
それが可視か出来るほどの異様な魔力を帯びている。
一言で女を表すと“異常”だ。
たった一人で何をするのかと、まわりに誰かいたなら声をかけただろう。
優雅な足取りで一つのダンジョンへと吸い込まれていった。
そのダンジョンは、この世界でトップを争う魔王の居城。
そう、アクトの親の住まうダンジョンだ。
次々とこの星の中空へ楕円形の穴が開き、次々と神々しい者達が地へと降り立っていく。
その数、最初の女を含め7人。
その手にはそれぞれの得物が握られ、決められたようにダンジョンへ足を運んでいく。
降り立った者達は神々しさは同じだが、全て違った種族であった。
最初の女が天使。人間。獣人。ドワーフ。エルフ。妖精。機械。
魔族と言われる魔王の配下になり得る生き物はいない。全て魔王の種族が蹂躙の限りを尽くした種族たちだ。
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