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「そういえばそろそろ実家に戻るか……バイバイ、ダークエルフのねーちゃん」
来年帰ると約束してから既に3年の月日が流れていた。
その間に魔王と言われる種族は突如現れた神聖な何者かにより滅ぼされていたが、アクトはその引きこもり体質から数年ダンジョンから外にでない事は当たり前のため何の情報も入ってこない。
外来者など親以外にいないのでアクトのダンジョンの場所を知るものもまた、アクトの親以外にいないのだ。
親に揃えてもらった装備品に手を伸ばす。
今現在、一糸も纏わぬ全裸だったアクトは一先ず下着を履く。その下着は下地が黒く魔方陣を象った(かたどった)のであろう刺繍が金色の糸で織り込まれてある。
金色の正体は魔鉱石を織り込んだ貴重な糸で、それ単品で魔法に対する耐性が著しく向上する力を発揮するものに、魔方陣の知識に長けたダークエルフ族の象った魔方陣に合わせて織り込む事によりその効力を10倍以上にも跳ね上げている。
トランクス型の下着を難なく履き終え、鼻唄混じりに次の装備品へ手を伸ばす。
靴下を手にしたアクトは床へ座り込む。
その靴下は膝まで伸びるタイプの靴下で、色はやはり黒。
銀の糸による魔方陣が靴下全面を覆い尽くしている。
銀の糸もやはり魔鉱石が織り込まれてあり、効力は反射。反射率は低いものの敵から受ける物理的ダメージを含むあらゆるダメージを敵に反射するというものだ。
それをダークエルフ族の魔方陣に合わせて織り込み効力を倍増させている。
通常、魔王族は装備をしない。基本的に全員、全裸だ。
これには色々な理由があるものの、一番大きい理由はそのプライドだ。
魔王であるというプライドが装備することを拒んでいるのだ。そう、魔王とは武器すら持たない、素手と身体能力のみで敵を蹂躙することに美学を導きだした種族だが、アクトはその例に漏れる変わり者。
魔王というだけで他の種族に比べ基礎値が異常なほど高いが、アクトはレベル上げをしたことがない低レベルなのだ。単身で歩いているときに殺されてしまうぐらいならと装備品への抵抗などなにもない。
むしろ好き好んで自分の装備品のデザインを親へ注文していた。
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