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うっすらと黒いオーラが立ち上っているズボンに手を伸ばして今度は難なく履くことが出来た。
ズボンから立ち上っているオーラの正体は魔力。
強大なドラゴン族の心臓を煮出した液体に1年の歳月を重ねた生地を使った装備品で、魔力、魔法耐性に強力な補正がかかる。
ドラゴンの血に染まり、赤黒くなったズボンを履き終えるとアクトよりも大きい大剣に手を伸ばした。
「カッカッカッ! コイツを振るうときが来たか!」
そう、アクトは一度も戦闘をしたことがない。
外に出ても敵対してくる生物は一匹もいない。
アクトが怖いわけではない。
魔王族は結束が強い種族だ。
基本的に死ぬほどの致命傷を負う事がない魔王族だが、不意打ちやトラップで大きなダメージを負うことがある。
不意打ち、またはトラップを仕掛けた種族は魔王族全体で追い詰め、ダンジョン内に連れていき、実験、意味のない拷問、ペットの食料にされてしまうのだ。
だから、魔王族に逆らうことは死を意味する。
アクトの魔力を吸って青い光を放つ大剣はドワーフ族の鍛治師10人がその命を消費して鍛える事ができるといわれる鉱石、星ドワーフ鉱石を使った魔剣。
使用者の魔力を吸い、破壊の限りを尽くすドラゴンの咆哮に匹敵する波動を魔力の弱い人間ですら出すことができるアクトお気に入りの秘剣だ。
「さて、行くか」
ダンジョンから出ようとしたら、出口が落石で埋まっていた。
「そういえば、何年か前に振動がしてたな……あれか?」
アクトが土の魔法で出口を作り直すと外へと出ていった。
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