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「なにがです?」
「女子大生の家出を、特異家出人にして捜査対象にするっていう決断がさ。普通できんだろ」
若い女の家出なら男のとこってのが定石だろ? とつぶやき、フライヤーから視線だけをあげて辰巳を見た。そういう発想のない潔癖すぎる辰巳を、軽く揶揄するように片眉をつりあげている。
「課長、女の子もいろいろですよ。無鉄砲に家出するタイプと、家でじっと我慢するいい子ちゃんタイプは行動パターンが違うんです」
「そのいい子ちゃんが、歌舞伎町の風俗店で保護されたか」
ちいさなため息。そして、メタルフレームの眼鏡越しに辰巳に鋭い視線を投げた。
「お前、この前北沢西署になに問い合わせた?」
バレたか、と辰巳は内心舌を出した。この上司に隠し事はできないらしい。受話器をおいて、重野に再び体を向けた。
「これでもう都内で三件目なんです。近隣の所轄でも似た事件が起こってます。補導歴、放浪癖のない優等生タイプの若い女の子が突然消える。そしてどっかの違法風俗で働かされてる。これ、組織的にやってる人間がいるんじゃないかって、思っているんです」
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