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ツナギの作業着を着て黒いゴム長靴をはいた小男が立っている。水色の蓋付きゴミバケツと同じ色した、汚れた作業着だ。彼は右手に持った手製のおもちゃを、目の前の少女に向けている。
四階まで吹き抜けになったフードコートのはるかに遠いガラスの天井から差し込む正午の陽が、男の顔に影をつくる。
青白くむくんだ夜型人間の顔。パソコンや携帯の画面を凝視しすぎた小さな目は、しょぼしょぼとくぼんでふちに目やにがついている。
二メートルほど離れて対する少女は、腰まですっぽりかくれる白いモヘアのセーターを着ていた。足もとは濃い色のタイツと足首までのショートブーツ。毛足の長いセーターの首のまわりには、雪の結晶のカットビーズが光っていた。ロングヘアの毛先が、乱れ散って胸の前を飾っている。
兎のようにふわふわしたニットの中の小ぶりの胸が、呼吸にあわせて激しく上下する。――少女はおびえていた。
男の手の先には、銅線コイルに包まれた銃身が、みがきたての十円玉と同じ色で輝いていた。銃身の下には、ジュースの缶を半分きりとったような円筒形の黒いコンデンサが四つと、電子回路の基盤を包む黒いアクリルの箱。部品がつぎはぎになった不格好な銃器だ。形だけなら、お菓子の空き箱とラップの芯で作った子供の工作のようだった。サバゲーごっこのなんちゃってアサルトライフル。
しかし充電された1000μFのコンデンサは、四つの機体のあいまに、ゆらゆらと凶悪な陽炎をたちのぼらせている。
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