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男がなにか叫ぶ。ヒステリックな口調で自分の不遇を訴えている。宗教家のようなおおげさな言葉で、この世の理不尽をなげく。
なにもかも間違っている。だから生贄が必要だ。
まるで自分のほうが被害者なのだと、このごにおよんで言い訳するように。
男がどんなに叫んでも、手製のコイルガンに充電された電気エネルギーは行き場もなく、じりじりと熱を持っているだけだ。どこにも逃げ場はない。誰かに放たれなければ、もうひっこみもつかない。
ショッピングセンターのフードコートは静まりかえっていた。床に黄色の紙切れが落ちている。来月から始まる歳末福引きの補助券だ。それはこの非日常的な状況から、はるか遠くの存在のようにういて見えた。
聴衆の冷ややかな態度に耐えられなくなったのか、命乞いする少女がくり返す言葉にうんざりしたのか、男は前ぶれもなくプラスチック製のトリガーをひいた。
人ひとり、かるく感電死させる高圧電流がぐるぐると銅線をまわり、コイルに強力な磁力を生む。
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