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磁力にひきつけられたプロジェクタイル(弾丸)は音もなく銃身の中を走った。ボウガンの矢を短く切ってとがらせた、細長いプロジェクションだった。
し、と空気をきる音をたてて、カーボン製の矢じりは銃口の先にいた少女の左目に突き刺さった。
すぱん、水風船の破れるような音。
十七歳の青い春をうたう鳶色の瞳。カーボン矢はその虹彩を残酷にひき裂くと、一瞬で眼窩を突き抜け、脳幹に身をうめて止まった。
少女の細い首は折れた小枝のように不自然な角度に仰向き、体はマネキンのように立っていたかたちのまま倒れていた。空中にすらりと赤い糸がひかれ、次の瞬間しずくになって床を叩いた。
ひとかけらの悲鳴もあげず、一滴の涙もこぼさぬまま、自分の姉が即死した時――――少年Aはそこにいなかった。
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