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「久しぶりだよね! こんなとこで会えると思ってなかったから、今まで全然気づかなかったよ」
「あたしも。頼子、眼鏡になってたし。頼子と同じ名前の子がいるなーくらいしか思ってなかった」
わたしはハルちゃんと同じ名前の子がいることすら知らずにいた。さっきの自己紹介がなければ、名前も知らないクラスメイトのままだったかもしれない。
「中学入って、眼鏡にしたんだ。急に視力下がっちゃって」
ほんとにほんとの、ハルちゃんなんだ。嬉しい。
まさかこんな場所で再会できるなんて思ってもみなかった。
「眼鏡もいいね。中学とかどうだった?」
「……うん。まあ、色々かな」
中学のことは、濁すしかなかった。楽しいこともあったけど、本当に色々なことがあったから。
『自分だけが特別なわけじゃないのにわかってなさそうだよね』
『頼子みたいな子のこと、放っておけないだけなのにねー』
人気のある男子を好きになったら、友達だと思っていた子に身のほど知らずだと陰で言われていた。そんなことは、自分が一番よくわかっていて、それでも好きだったんだ。
教室に見えない線があって、世界がひとつじゃないことを知った。
世界が違えば、釣り合わないんだってことを学んだ。でもそこを出なければ、平穏は保たれる。
だから、高校ではもう間違えたりしたくない。
「そっか。まあ、また会えて嬉しいよ」
「わたしも」
中学の同級生に遭遇するよりも、ずっと嬉しいことだ。
1人でいることが辛かったわけじゃないけど、親しい友達がまったくいない寂しさもあった。
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