episode1 席替え

11/21
965人が本棚に入れています
本棚に追加
/179ページ
「頼ちゃんがそうやって話してるの、初めて見た。話すのが嫌いとか、そういうのではないんだよね?」 片岡くんが確認のように訊ねる。 「え、ああ、まあ……」 うなずいたわたしに、理央くんも「そうだったんだ」と驚いている。そんなに驚かれるようなことでもない。 もともとわたしは、おしゃべりな方だったと思う。 ハルちゃんのように話せる人がいれば、話すだけだ。今までは、そういう人がいなかっただけ。傍から見ると、わたしは話すのが嫌いな人に見えていたのかな。 「あっ、そうだ。俺のことも碧って呼んでね。みんなそう呼んでるし……って、頼ちゃんはそれだと自分の名字呼んでるみたいになっちゃうか」 「いえ、それは大丈夫。じゃあ、お言葉に甘えて呼ばせてもらうね」 その“みんな”にわたしが含まれていていいものかと思ったものの、本人が言ってくれたことを否定するのは良くない気がする。 みんなと同じように呼び捨てにはできないから、碧くんと呼ばせてもらうことにしよう。 人気者の隣の席って、何だか怖いなあ。色んなことを気にしないといけないかもしれない。 次の席替えまで、どうにかやっていけるといいな。 休み時間は、教室にいるのはやめにしよう。 ひとまず休み時間は、図書室に行こうと決めた。
/179ページ

最初のコメントを投稿しよう!