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「あ、窓際だ。やったー。そっちはどうだった?」
片岡くんは紙を広げて、黒板と照らし合わせている様子。喜んでいるところを見ると、どうやらいい席が当たったらしい。
「俺前だったわー。碧どこ。うわー、後ろじゃん。いいな!」
片岡くんの横にいた友達が覗き込んで、うらやましがっている。
「安部ちゃんごめん。一番後ろだった。寝てても起こさないでよ」
安部先生は「寝るなよ」と苦笑いだ。後ろになりたいと願って、後ろになっちゃうなんてさすがだなあ。人気者は引き寄せる力も人一倍ってところか。
後ろだろうが、前だろうが、きっと目立つのは変わらないんだろうな。片岡くんは、そこにいるだけで目を引く存在なんだ。
隣の人は、きっとうらやましがられることだろう。だって、あの片岡碧くんなんだもの。
「隣もう埋まってんじゃん。早すぎ」
「えー、早い」
クラスメイトの声を呑気に聞いて──あ、ちょっと待った。ちょっと。
女子たちが残念そうな声をあげていることに気がついて、片岡くんが綺麗な字で黒板に名前を書いたその隣が、誰なのかを思い出した。
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