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「あ、ねえ、せっかくだから理央も自己紹介してよ」
片岡くんの前の席で突っ伏して、寝ているであろう男子をつついて起こす。眠たそうな目を擦りながら、振り向いたその人は「あ?」と不機嫌だ。
アシメだし、ピアスをしているし、どう見たって派手だ。
起こしちゃまずかったんじゃないかな……。自己紹介なんていいから、とは言葉にできず、2人のやり取りをハラハラしながら見守る。
「自己紹介。隣のハルも!」
「はあ? 知ってる人にわざわざ自己紹介なんてしたくない」
うわあ、大人しそうだと思ってたけど、結構はっきりと言う人なんだな。わたしの前の席の、ミディアムヘアの女の子。
ナチュラルメイクで、染めていない髪で、華やかというよりか、どちらかといえば地味な感じ。でも、わたしとは全然違う。やっぱり、華やかな世界の人なんだろうと思う。
「いいじゃん。頼ちゃんとは初めてだし」
「まあ、それもそうね。岡田晴香。よろしくね」
懐かしいその名前に、親近感を覚えた。小学5年生で転校してしまうまで、仲良しだった女の子と同じ名前。
元気にしてるかなあ。転校してしまうという日に風邪をひいたわたしは、連絡先を聞き損ねてしまって、それっきりなだった。
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