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 千葉県警船橋南警察署捜査課第一係主任 、逢坂  義之警部補。  三年前に亡くなった彼の妻が入退院を繰り返し、息を引き取った病院は、そこが病院以外のなにものでもない建物だった。  鼻につく消毒の匂いと、靴底がぺたりと貼り付くようなリノリウムの廊下。カバーなどされてはいない、むき出しの蛍光灯。けして不潔ではない筈の、タイル張りのトイレ。 『帰りたい』などと、我が儘のひとつも云わなかった妻。そんな我慢強く健気でさえある妻を、看取ってやる事が出来なかった。 『こんな病院だったなら、少しは気も紛れたのだろうか』  今となっては、妻がどんな思いで病院暮らしをしていたかなど、知るよしもなかった。ただ、逢坂と娘の事ばかりを気に病んでいたのは、隠しようもない事実だった。
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