プロローグ

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 たいして疲れる様な一日ではなかった筈だったが、季節感からか数日前から体調がすぐれない。疲れ目なのかやたらと目が霞み、今日は何度も目薬をさした。  ダッシュボードに入れてある目薬を取ろうと手を伸ばした時、山波は目眩を感じた。扉を開き外の風にあたろうと、車から出た。  朝焼けを迎える時間だ。それなのにやたらと辺りは暗かった。腹痛を覚え、嘔吐感も襲ってきた。 ーーなっ、なんか、やっ、やばい。  飲んだばかりのコーヒーと胃液を撒き散らし、その場に倒れ込んだ。 ーーだっ、誰か、たっ、助けて……。  遠くに足音を聴いた気がした。誰かが駆け寄って、何かを叫んでいる。その人物の足元が観えている筈なのに、山波の眼には暗闇しか映らなかった。 ーー眼が、みっ、見えない。  山波はそのまま、気を失った。
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