いのち の 色

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 絵を受け取る時に、お父さんの手が見えた。  だんだんと細くなって、骨が目立つようになってきた手。  美佐子は、その手が怖かった。  お父さんとお母さんが、何かを話していた。 「お父さん。欲しいものはない」  美佐子はお父さんにきいた。  美佐子は、怖くなった何かから目を背けるようにきいた。 「そうだな。本が欲しいかな」 「本?」 「うん。小さい頃に読んだやつ。宮沢賢治のグスコーブドリの伝記が読みたいかな」  お父さんは笑った。 「ブドリは死んじゃうんだけど、そのおかげでみんなが幸せになるんだ」  美佐子は、ビクッとなった。  怖くなった何かが、また見えた気がした。 「わたし買ってくるよ」 「大丈夫かい」  お父さんが笑いながら、身を起こした。 「わたしは、もう小学3年だよ」 「じゃぁ。頼んじゃおうかな」 「うん」  美佐子は、病室を飛び出した。  怖くなったものから、逃げるように飛び出した。
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