いのち の 色

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「おじいさんには、病気のことはわからんが」  おじいさんは美佐子の横にイスを置くと、自分も腰をおろした。 「お嬢ちゃんは、絵がすきかね」  美佐子は、びっくりした。  おじいさんとは、今日、はじめて会うのだ。 「指が、色鉛筆でよごれとるよ」  おじいさんは、笑った。  美佐子の右手の中指に、色がついていた。  美佐子は、少し、気持ちが軽くなった。 「お嬢ちゃんは絵を描く時、どんな色を使うかね」 「赤とか。オレンジとか」 「それだけじゃ、ないじゃろう」 「緑とか。青とか」 「そうじゃな。いろいろな色を使うね。いろいろな色を使うから絵はきれいになるんじゃ」 「うん」 「その絵を、だれかに見せるじゃろう」 「お父さん。お母さんとか」 「よろこんでくれるじゃろう」 「うん、いつも褒めてくれるよ」 「そうじゃろう」  おじいさんは、うんうんとうなづいた。
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