苦しさと優しさと愛しさ

2/10
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/131ページ
「…………」 ラヴィードは暗闇の中、一人で浮いていた。 いや、浮いているのか? それともこれが着地している状態なのか? それすら、曖昧になっていた。 だが、ラヴィードはこの謎の空間に放り出されていても、別段慌てている様子はない。 この光景に、既視感を覚えているからだ。 「(思い出した、この空間……前はいつだったっけ? 確か、ウンディーネと戦った後……だったっけかな)」 すると。 =やぁ。また会ったね、ラヴィード= 暗闇の中から、聞き覚えのある声が響いた。 突然どこからともなく響いてきたが、ラヴィードは特に驚いていない。 聞こえてくるだろうと、心の準備が出来ていたからだ。 「よう。会ったっつーか、あんたは光の球体じゃねぇか。俺側の認識は浅いぞ」 =それもそうか。それにしても、もうこの空間に慣れちゃったのかい? 張り合いが無いなぁ= 顔は分からない。 妖精のように、光100%だからだ。 それでも、声で"つまらない"と言いたそうな雰囲気は伝わる。 「知らねぇよ。てか、幾つか質問があるんだがよ」 =ま、こんな摩訶不思議な空間にいて、無い方がおかしいよね。どうぞ= 「あんた、何者なんだ?」 =…………= 確実に訊いておきたい事。 こんな状態で干渉出来るこの光は、一体何者なのか。 果たして、光が答える回答は…… =いずれ分かる時が来るよ= 「んっだよ、それ」 何とも、曖昧なものだった。 聞きたかった答えとは大分違ったが、ラヴィードも何となく分かっていた。 どうせ、そう簡単には答えてくれないだろうと。 =って、僕は濁したけど……本当は、もう分かっているんじゃない?= 「…………」 が、光はラヴィードの本質を見抜いていた。 ラヴィードが余裕ぶって苦笑いをする時は、実は何となく答えが分かっている。 本当に分からなければ、何度も食い下がるのがラヴィードという少年。 それを理解しているが為、ワンクッション置いてからかったのだ。
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!