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「あれは、ラヴィード君の中に巣食う別の存在だって。ラヴィード君が自分から仲間を襲うなんて、絶対に有り得ないもん」
「でも俺は、現に皆を傷付けちまった……」
「傷だらけになっても、私達は何度だってラヴィード君を全力で止めるよ」
「マーシャル……!」
「だって、私達は仲間だもん。誰か一人でも欠けるなんて、そんなの有り得ないわよ」
「仲間……暴走した俺でも、仲間だって言ってくれるのか……?」
「仲間って言葉を一番重んじてるのは、ラヴィード君でしょ? だから、私達は信じてるの。いつかラヴィード君は、そんなのも乗り越えてくれるって」
「っ……うぐ……!」
一つ一つが、霧を晴れやかにしてくれる優しい言葉。
溢れさせるまいと堪えていた涙が、知らず知らず溢れていた。
嗚咽も出ない程、自然にすうっと流れた涙。
ラヴィードの人生で、そんな状況は一度たりとも無かった。
「それに、私達だって強いのよ? ラヴィード君が乗り越えてくれるまで、私達も立ち向かうからねっ」
「あぁ……あぁっ……!」
二度目の返事の時には、嗚咽も漏らしてしまった。
そして今度は、ラヴィードがマーシャルを包み込むように抱擁する。
マーシャルも一瞬だけ赤くなったが、すぐに微笑みの表情へと変えた。
「俺、力を制御出来るようになるよ……! そんで今度はその力を使って、ちゃんとマーシャル達を守れるようになる……!」
「うん、待ってるね」
「だからそれまでは、お互いがお互いを守っていこう……! 虫の良い話かも知れないけどさ……!」
「ううん、そんな事無いよ。一緒に頑張っていこうね」
マーシャルにも、一筋のきらりと光る涙の雫が流れていた。
信じているからこそ。
だからこそ、こんな言葉を交わせるのだろう。
二人は暫し抱き合いながら、涙を流し合った。
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