苦しさと優しさと愛しさ

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訳が無く。 「おーい嬢ちゃん、ラヴィード坊は目覚めたか?」 ノックも無しに、ジェボが部屋へと入ってきた。 二人は飛び跳ね、ラヴィードは何故か寝たふりをし、マーシャルは何故かフルーツバスケットを持って椅子に座った。 慌てた挙げ句の、意味不明な行動。 「な……何やってるんだ、お前ら……?」 「あっ、ジェボさん! いやぁ、全く気づかなかったですぅ!」 「いや、嘘下手かよ。で、ラヴィード坊? お前、もう起きてるよな?」 「あ、あれっ、親方!? おう、おはよう! 今起きたわ!」 「お前も嘘下手かよ……あぁ、もしかしてあれか? 俺、お邪魔だったか?」 「いっ、いや、そんな事無いぜ!? なぁ、マーシャル!?」 「そ、そうですよぉ! そんな、ジェボさんを省くなんて事しませんでまんねん!」 「……まぁ、そういう事にしといてやるよ」 勘が良く、空気も読めるジェボ。 取り敢えず、二人の甘い雰囲気は無かった事になった。 二人は緊張と衝撃の相乗効果で、未だに動悸が止まらない。 心不全になりそう。 「それよりラヴィード坊。ここが何処か分かってるか?」 「え、どこって……宿屋だよな?」 内装を見るに、宿屋としか言い様が無い。 問題は、ここはどこの宿屋なのかという事だが。 「理解力はあるみたいだな。そう、ここは宿屋だ。キャルムのな」 「キャルム? なんでここに戻ってきたんだよ?」 「実はラヴィード君が寝てる間に、色々と野暮用が出来ちゃったの」 「野暮用?」 すると。
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