死後の世界

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私には愛人がいた。 私より年齢は十歳も若く、彼女との時間はとても濃密だった。 彼女との時間も大切にしていたが、私は家庭も大切にしていた。 家に帰ればしっかりと父親、夫を演じた。 家庭を築いて三十年、はたから見ても自分自身でも良い家庭だったと思う。 だが、愛人の事がバレれば一瞬でその幸せは破綻する。 死ぬまでバレなければと思っていたが、今も意思がある以上、死んでからの破綻は惨めで恐怖でしかない。 そんな事を考えている内に、私の通夜が始まった。
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