それでも湯気は暖かい。

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昔から男運は最悪だったと思う。 中学の時に付き合った一つ上の先輩は実は『処女専』を公言するナルシストだった。半年程付き合ったある日『新鮮味が無くなって、俺と並ぶにはいまいち』と言う理由で一方的に別れを告げられた。 高校時代の同級生は、校内でも指折りのモテ男だった。 どうして私に告白して来たかよくわからないまま付き合った一ヶ月後、私と何処までヤれるかを友達と賭けていたと判明。最終的に私がそいつのイケメン顔をグーで殴って幕を下ろした。 それからも、デート中に辛辣な言葉をずっと浴びせてくるヤツ、6股をかけていて週一でしか会えないヤツに、猛烈に口説いて来るからと付き合ってみたら妻子持ちだったヤツ…。 歳を重ねるごとに、男に対して疑心暗鬼が募る。そんな私の心が完全に枯れてしまわぬ様にことあるごとに優しく水を注いでくれたものがある。 それが…母の作る“ポタージュスープ”だった。 玉ねぎ、人参、セロリにジャガイモ…家にある野菜を刻み炒めてから柔らかくなるまでコンソメで煮込む。 それをミキサーにかけて、ざるで濾す。 出来上がったゆるめのペーストに牛乳か豆乳を混ぜ温めて、スープにする。 「おかえり」と向けられる笑顔と湯気。 しおれた心もそれに包まれると優しい気持ちへと新たに生まれ変わった。
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